全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ本屋大賞。
2021年は町田そのこさんの小説「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)が選ばれました!
本屋大賞は今回で18回目。近年は社会問題を扱う作品の受賞が続いています。
「52ヘルツのクジラたち」も児童虐待、DV、LGBTなど現代社会の問題が詰まった作品となっており、ネタバレなしでご紹介します!
2021年本屋大賞順位発表
— 本屋大賞 (@hontai) April 14, 2021
その1
1位「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ,中央公論新社
2位「お探し物は図書室まで」青山美智子,ポプラ社
3位「犬がいた季節」伊吹有喜,双葉社
4位「逆ソクラテス」伊坂幸太郎,集英社
5位「自転しながら公転する」山本 文緒,新潮社
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52ヘルツのクジラたち作品概要
52ヘルツのクジラたちあらすじ
「わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ」
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。
孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会う時、新たな魂の物語が生まれる。
引用:52ヘルツのクジラたち (単行本) | 町田 そのこ |本 | 通販 | Amazon
「52ヘルツのクジラたち」は一人の女性(貴瑚)が、虐待されている男の子を救おうとする物語です。
貴瑚自身も長年にわたり家族から虐げられており、家族のもとを離れ大分県の田舎町でひっそりと暮らしていました。
そこで母親から虐待を受け口が聞けなくなった少年と出会い、孤独のつらさを知るものどうし絆を深めながら成長していきます。
受賞歴
- 第4回未来屋小説大賞
- 王様のブランチBOOK大賞2020
- 読書メーターオブザイヤー2020総合ランキング1位
- 2021年本屋大賞
町田そのこさん/著書プロフィール
『52ヘルツのクジラたち』が、2021年 本屋大賞をいただきました。たくさんの方の応援のお陰で、しあわせな景色を見ることができました。ありがとうございます。賞に恥ないよう、これからも頑張っていきます pic.twitter.com/qfH5uQzGYx
— 町田そのこ (@sonokosan3939) April 14, 2021
経歴
福岡県在住。1980年3月9日生まれ。28歳の時から携帯小説を書き始める。
2016年、「カメルーンの青い魚」で第15回女による女のためのR-18文学賞(新潮社主催)で大賞を受賞。同作含む「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」(2017年/新潮社)でデビュー。
小説家になったきっかけ
小説を書くきっかけになったのは、小学生の時にいじめにあった経験があるそう。
- 学校が辛かった時に、教室で一人で本を読んでいれば物語に入ることで集中できた
- 登場人物たちに背中を押されて「頑張れ」と言われている感じがした
- 物語があったからこそ健やかに健康に生きてこられた
ことから、
「物語に対して自分が受けた恩を返したいと思っていた」
「作家になることで自分が与えられたものを誰かに返すことができるので、作家になれてすごくよかった」
とインタビューで述べています。
町田そのこさん自身もいじめという経験から、主人公や少年と同じ「孤独のつらさ」を知っているんですね。「52ヘルツのクジラたち」では弱い立場にある人たちの声や思いが丁寧に描かれています。
参考:ことしの本屋大賞に町田そのこさん「52ヘルツのクジラたち」 | エンタメ | NHKニュース
52ヘルツのクジラの意味とは?
52ヘルツのクジラとは?
「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴くため、仲間に声を届けられず「世界で一番孤独なクジラ」と言われています。
ウッズホール海洋研究所(WHOI)のチームにより発見され、その鳴き声は1980年代からさまざまな場所で定期的に検出されてきました。
正体不明の種の鯨の個体で、世界で唯一この周波数で鳴くといわれています。
52ヘルツというのはチューバの最低の音よりわずかに高く、似た回遊パターンをもつシロナガスクジラ(10~39ヘルツ)やナガスクジラ(20ヘルツ)よりずっと高周波数です。
52ヘルツのクジラたちの意味とは?
私の声は、誰にも届かない52ヘルツの声だったんだ
引用元:52ヘルツのクジラ/町田のりこ
貴瑚は52ヘルツのクジラのことを知り、これは自分のことだと思います。
そして、同じように虐待を受けている少年を「52」と呼ぶことにしました。
この社会には、児童虐待、家庭内DV、LGBTなど声をあげても届かない人たちや、声すらあげられない弱い立場の人たちが存在します。
作中にもそういった背景を持つ登場人物達が登場します。
52ヘルツのクジラを彼らに重ね合わせることで、辛さや苦しみを浮き彫りにしているのです。
また、著者の町田そのこさんは、「52ヘルツのクジラをどういう人に読んでもらいたいか?」という質問に対してこう答えています。
「誰も自分のことは助けてくれないと、あきらめている人ですかね。誰かに頼るとか、甘えるとか、声を上げることをあきらめてしまった人が、この本を読んで、もう一回でいいから声を出してみようって思ってくれたら。例えば、いつも教室に一人でいるような子が、友達とかに『おはよう』って声をかけてみようかなとか、『一緒にご飯を食べよう』とか、この本を読んでそういう気持ちになってくれれば、うれしいです」
引用元:何かをあきらめて孤独な人へ。児童虐待を描く「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞ノミネート 町田そのこさんに聞く | 子育て世代がつながる | 東京すくすく ― 東京新聞 (tokyo-np.co.jp)
「52ヘルツの声」にもきっと届く人がいる、見つけてくれる人がいる。自分もそういう人になりたいと思えた作品でした。目を覆いたくなるような辛い描写もありますが、読了後はほっこりと温かい気持ちになりました。
ドラえもんにも登場!52ヘルツのクジラを扱った作品
世界で1番孤独なクジラをモチーフに様々な作品が作られています。
52Hzのラヴソング
2017年制作。台湾のヒットメーカー、ウェイ・ダージョン監督作品。
全17曲のオリジナル楽曲を使用しキャストには台湾で活躍するミュージシャンが集結。
バレンタインデーの1日を通して、様々な愛の形と出会いを描いています。
監督は52Hzのクジラをモチーフに、都会の孤独な人々にメッセージを贈りたいと花屋の女の子とチョコレート店の男の子のラブストーリーを含ませています。
ドラえもん「クジラとまぼろしのパイプ島」
2018年のドラえもん誕生日スペシャル作品として「クジラとまぼろしのパイプ島」がテレビ朝日にて放映されました。
夏休み最後の日に、おざしきつりぼりで釣りをしていたのび太は大きなクジラと出会います。
そのクジラは52ヘルツの特殊な周波数で鳴き7000年前から来たことがわかります。
タイムマシンで7000年前に行くと人間の住む文明の発達した島がありました。
なぜこの島はこんなに発達し滅んでしまったのか?
南の島を舞台に、のび太たちの大冒険を描いています。
52ヘルツのクジラたちまとめ
- 「52ヘルツのクジラたち」は一人の女性が虐待されている男の子を救おうとする物語
- 「52ヘルツのクジラ」とは、仲間に届かない高い周波数で鳴く「世界で一番孤独なクジラ」
- 「52ヘルツのクジラたち」の意味とは、社会に存在する声をあげても届かない、声すらあげられない弱い立場の人たち
いじめを経験し物語に救われた町田そのこさん。小説を通して恩返しをしたいという気持ちが込められた一冊です。
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