山岸尚美は、東野圭吾さんの推理小説シリーズである「マスカレード・シリーズ」に登場する一流ホテリアです。
シリーズ第1作目となる「マスカレード・ホテル」は2019年に実写映画化され46.4億円の大ヒットを記録しました。
山岸尚美役は長澤まさみさんが演じています。
映画『#マスカレードホテル』本編ノーカット&地上波初放送中
— 【公式】フジテレビムービー (@fujitv_movie) January 3, 2020
一流ホテルマン・山岸尚美を演じるのは、 #長澤まさみ さん。ホテル監修者からも「姿勢が本当に素晴らしい」と言われるほどのホテルマンらしさが身についていたそう。 pic.twitter.com/3g1CWfFJ6i
マスカレード・シリーズは推理小説ですが、一流ホテルの舞台裏が詳細に描かれているのも魅力。
中でも、山岸尚美がホテリアとして様々なお客様の要望を解決していく姿が見所の一つです。
そのプロフェッショナルな仕事や姿勢が本当に素敵で、山岸尚美の仕事には接客力を向上させるヒントがたくさん詰まっています。
山岸尚美が対応したお客様のエピソードと名言を紹介します!
山岸尚美の名言/マスカレード・イブ編
デポジットを拒否する当日予約のカップル
名言
お客様を信じるなら、とことん信じる。中途半端なことはやめなさい。
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P192 山岸尚美のセリフ
エピソード
ペアのTシャツを着た20代のカップルがチェックインをする為にフロントに来ました。
新人フロントクラークが対応し、デポジットとして3万円を預かることを説明すると
「財布が空になってしまう」
と拒否。
2万円なら払う意思がありました。
新人フロントクラークが意を決し2万円で受け付けようとしたその時。
一部始終を見ていた山岸尚美が「デポジットは結構です。」とお声掛けしました。
「払わなくていいんですか」とお客様も当惑。
お金のことが気になっていては落ち着いてお食事もできません。どうぞ安心して、ごゆっくりと大阪の夜をお楽しみください。万一、宿泊費が足りなくなった場合には、後日請求書をお送りいたしますので、お振込みいただければ問題ございません。
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P190 山岸尚美のセリフ
あ、それなら助かるな。でも、本当にいいんですか?
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P190 男性客のセリフ
はい、お客様を信頼しておりますので。
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P190 山岸尚美のセリフ
それを聞いたお客様は、はっとしたように目を見開きました。
山岸尚美の対応はそれだけでは終わりません。更にお客様に尋ねます。
このたびの御利用は、何かの記念日とかでしょうか
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P190 山岸尚美のセリフ
山岸尚美は宿泊表の住所から
- 関西在住で自宅から電車で1時間の距離である大阪の高級ホテルにわざわざ泊まりに来たこと
- 当日予約であり今日でなければならない理由があったのではないか
- 今日という日は大事な日で、男性がうっかり忘れており慌てて予約したのではないか
と考えたのです。
お客様は手照れ笑いをしながら「結婚記念日なんです」と答えると、
それはおめでとうございます。素敵な夜になることをお祈りしております。
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P190 山岸尚美のセリフ
とお祝いの言葉を伝えました。
カップルは声を揃えて「ありがとうございます」と言い立ち去りました。
先ほどまで仏頂面だった男性客は笑みを浮かべ、女性客も機嫌が良さそうでした。
山岸は新人フロントクラークに、彼らがスキッパー(代金を踏み倒して逃げる客の事)だと思いデポジットを徴収しようとしたのかと尋ねます。
新人クラークが、
- 違うだろうとは思ったが、当日予約なのにデポジットなしというのはまずいのではないか
- それで2万円だけ預かっておこうかと思った
と答えると、
お客様を信じるなら、とことん信じる。中途半端なことはやめなさい。
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P192 山岸尚美のセリフ
と諭すのでした。
夕食の店を探す蟹アレルギーの老人
名言
お客様の顔を見ながら、この方に何をしてあげられるだろう、自分は何を期待されているだろうって考えるの。そうすれば覚えられる。
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P253 山岸尚美のセリフ
エピソード
宿泊客の老人が「ホテルの近くにある中華料理店でいい店がないか」と尋ねました。
対応したのは若手フロントクラーク田代でした。
田代はホテル近辺の主な飲食店をリストアップしたファイルから店を紹介しました。
老人は「近くていい」と納得し田代に予約を頼みます。
その時、山岸尚美が声をかけます。
お客様。上海蟹ですがよろしいでしょうか?
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P190 山岸尚美のセリフ
山岸尚美は2ヶ月前に、この老人を対応し彼が蟹アレルギーだと言っていたのを覚えていたのです。
- 今の時期、その店のコース料理は上海ガニがメインになること
- メインを他の料理と変えることは可能だが、せっかくなら他の料理を名物にしている店に行くのはどうか
とお伝えし、北京ダックの店を紹介します。
老人は「こっちがすっかり忘れているのによく覚えているね。大したものだ。」と感心し、その店を予約することにしました。
対応後、田代が
「2ヶ月も前のお客様の顔を覚えていてすごい、自分は覚える自信がない」
と山岸に伝えると、
お客様の顔を見ながら、この方に何をしてあげられるだろう、自分は何を期待されているだろうって考えるの。そうすれば覚えられる。
引用:東野圭吾/マスカレード・イブ P253 山岸尚美のセリフ
と答えたのでした。
山岸尚美の名言/マスカレード・ホテル編
部屋をアップグレードしようとするクレーム客
名言
昔、先輩から教わったの、お客様と無駄な駆け引きはしないこと
引用:東野圭吾/マスカレード・ホテル P10 山岸尚美のセリフ
エピソード
禁煙室のシングルルームを希望していた宿泊客から「煙草の匂いがする」というクレーム。
状況から、明らかに部屋のアップグレードを要求する為に宿泊客自身が煙草に火をつけたと思われました。
しかし、山岸はお詫びし代わりにスイートルームを提供。
ツインやデラックスルームではなくいきなりスイートルームを案内したのは、
- 証拠はない。お客様は常に正しい
- わざとクレームをつけるくらいなら別のシングルルームに案内しても意味がない
- ツインやデラックスで納得せず、いくつも部屋を提示することになったら面倒
という理由からでした。
部屋をアップグレードしたことで宿泊客の作戦に引っかかったと憤る後輩社員に対して、かけた言葉がこの名言です。
待ち列に並ぶ時間のないビジネスマン
名言
ルールはお客様が決めるものです。昔のプロ野球に、自分がルールブックだと宣言した審判がいたそうですが、まさにそれです。お客様がルールブックなのです。だから、お客様がルール違反を犯すことなどありえないし、私たちはそのルールに従わなければなりません。絶対に。
引用:東野圭吾/マスカレード・ホテル P44 山岸尚美のセリフ
エピソード
ホテルマンに扮する新田刑事がお客様から声をかけられます。
得意先との会食の時間が迫っている為、チェックインの待ち列に並ばずに何とかしてほしいという要望でした。
新田は「他のお客様も並んでいる為特別扱いはできない」と会食の後にチェックインすることを勧めます。
しかし、お客様は「チェックインをしないと食事代を部屋付けにできない」と納得されません。
そんな時山岸尚美が現れ、
- こちらでチェックインの準備を済ませる為、列に並ばず会食に向かってただくこと
- 準備が済み次第、部屋のキーと宿泊票をレストランに届けること
- その際にサインを頂くこと
を提案します。
対応後に、新田からの
「なぜさっきの客にルールを守らせないのか、遅く来たのが悪いのだから並ぶのがルールではないか?」
という問いに山岸が答えた言葉がこの名言です。
これに対し新田は驚き、
「客のわがままを全部聞いていたらきりがない。全員が好き勝手なことをいいだしたら収集がつかないじゃないか」
と言うと
そこを何とかするのが私たちの仕事です。すべてのお客様が上品で理性的で辛抱強いとしたら、ホテルマンほど楽な仕事はありません。
引用:東野圭吾/マスカレード・ホテル P45 山岸尚美のセリフ
という山岸の言葉に返答を窮するのでした。
その他
マスカレード・ホテルでは山岸尚美が様々な宿泊客を対応していく様子が描かれています。名言も多く一部をまとめて紹介します!気になる方はぜひ原作を読んでみてくださいね!
私たちはお客様の幸福を祈っています。でも、自分たちが無力であることもわかっています。だからこそ、ご出発のお客様には、こうお声掛けをするのです。お気をつけていってらっしゃいませ、と。
引用:東野圭吾/マスカレード・ホテル P44 山岸尚美のセリフ
私はこの世界に入った時、感謝の気持ちを忘れるなと教えられました。お客様への感謝の気持ちがあれば、的確な応対、会話、礼儀、笑みなどは、特に訓練されてなくても身体から滲み出てくるからです。
引用:東野圭吾/マスカレード・ホテル P61 山岸尚美のセリフ
対抗ではなく、対応するのです。感情的になってはいけません。私のことは心配しないでください。キーを打つことなど何でもありませんから。
引用:東野圭吾/マスカレード・ホテル P278 山岸尚美のセリフ
山岸尚美の名言まとめ
- 山岸尚美は、東野圭吾さんの推理小説「マスカレード・シリーズ」に登場する一流ホテリア
- マスカレード・シリーズには一流ホテルの舞台裏が詳細に描かれていることも魅力
- 山岸尚美が対応するお客様のエピソードや名言には接客力を向上させるヒントが多くある
マスカレード・ホテル執筆の際に、東野圭吾さんはロイヤルパークホテルを取材しホテルの裏側やフロントやベルボーイ、客室係などのリアルな姿を紹介されたそうです。山岸尚美の素晴らしい接客は、一流ホテルのホテリアの姿がもとになっているのかもしれませんね!
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